ご訪問くださりありがとうございます!クルミットです♪
第21〜30話のチスは、「純粋な若者」というキャラクターから完全に外れていきます。婚約していたホン・ミグムを一方的に突き放し、飢饉の救済米を偽装して湾商(マンサン)を陥れ、松商(ソンサン)内部の反乱を拳で鎮圧してトップの座をつかむ。でもそれで終わりじゃなくて、イム・サンオクとの人参交易権を巡る本格的な商人同士の駆け引きも並行して走っていて、そっちはそっちで純粋に面白い。この10話、しんどい場面とちゃんと面白い場面が混在してます。一緒に見ていきましょう。
ミグムへの宣告――婚約破棄という「けじめ」
ホン・ミグムがチスを訪ねてきます。婚約者として話し合いを求めてのことだと思うんですが、チスは完全に壁を作って切り捨てます。「自分は野心のために都房(ドバン)の旦那、ホン・ドゥクチュを裏切った卑劣な人間だ。お嬢様を慕う資格はない、私を忘れてくれ」とはっきり言い切る。言い訳もなければ未練を見せる素振りもなく、ただ突き放す。
ちなみにチスはかつてパク・タニョン(松商の大房の娘)にも関心を示していたんですが、それは彼女が大房の娘だったからというのが理由として推測されています。ミグムへの感情がゼロだったとは言い切れないにしても、チスの中で「関係への打算」はかなり初期から根づいていたんだなと改めて思います。
「資格がない」と自覚した上で突き放すやり方が、謝罪よりもある意味きつい。ミグムは言い訳すら聞けないまま終わるわけですから。
救恤米に砂を混ぜる
松商サイドで、湾商が運ぶ救恤米(飢饉時の救済用の米)を使って湾商に濡れ衣を着せる計画が持ち上がります。チスは最初、これに激怒します。かつて食べるものにも困った経験があるから、食べ物を使った悪だくみには生理的な拒否反応がある。そのチスが、最初は怒るのに、結局は受け入れてしまう。救恤米に砂や糠を混ぜ、水でふやかした米とすり替えて湾商に罪を被せる。
これが松商の大房であるパク・チュミョンにバレて、「小人」と罵られます。「こんな奴だと知っていれば湾商から引き抜かなかった」とまで言われる。救恤米の問題自体は松商が助ける形で解決しますが、湾商は没落してしまいます。チスはその後、イム・サンオクが働いていた鍮器廛(真鍮の店舗)まで買収して、湾商の後始末を商業的に回収しています。
最初に激怒したのに受け入れてしまう、そのブレが「もうここまで来たんだ」という感じでした。大房に「小人」と言われるシーンは、罵倒の言葉が珍しく的を射ていてつらかったです。
1年後、没落したミグムとの再会
時間が約1年飛んで、チスは見た目も変わっています。髭を蓄えて、身なりも良くなった。一緒に学んだ友人は戸曹正郎(官職)についているのに、チスは科挙を受けずに商売の道を歩み続けている。この対比が意識的に差し込まれている気がします。「普通のルート」を捨てた選択が正しいのかどうか、チスの顔から読み取れとでも言いたげな描き方です。
そのチスが偶然ミグムと再会します。自分の裏切りで実家が没落し、苦労を重ねているミグムを前にして、チスは何も言わない。声もかけない。ただ、こっそり彼女の家に米と木綿を置いて去るんです。
言葉じゃなく物を置いていく、その選択がなんともチスらしくて。「それで楽になれているのは自分だけじゃないのか」ってちょっとひっかかります。
人参交易権でイム・サンオクに完敗する
高麗人参の交易権を得るために、チスはイム・サンオクと対面します。でも結果は明白で、交易権はイム・サンオク側がはるかに多く獲得することになる。松商は多額の裏金を積んでいたにもかかわらず、それでも負けてしまう。この敗北が松商内部に動揺をもたらし、後の内紛へとつながっていきます。
裏金を積んでも勝てない、というのがシンプルにサンオクの地盤の厚さを見せつけてくる場面です。チスがどれだけ動いても、相手の根張りがもっと深い。この時点でのパワーバランスが数字でくっきり示された感じで、「ああ、まだここに差があるのか」というのが正直なところでした。
チスがここで一発完敗するのが意外でした。もっと食い下がるかと思ったら、案外あっさり押し切られていて。
松商の内紛をチスが拳で潰す
人参交易権の失敗を受けて、松商の都房たちが秘密裏に集まって大房・パク・チュミョンの交代を画策します。こういう場面、普通なら「チスも参加して足場を固める」展開が来そうなのに、実際は逆です。チスはならず者を連れてきて、会議を主導した連中を自分で殴り倒して鎮圧してしまう。大房の側に回ったわけです。
その結果として、チスは松商の本店都房に就任します。計略や根回しではなく、物理的に場を制圧して座を取るというやり方。都房たちの主導者を殴り倒してから都房になる、というのがまたチスらしい荒い動きです。
「大房を守った」というより「自分が次の手を打つために場を維持した」としか読めなくて、そのドライさがまた、っていう感じです。
本店都房vsサンオク、乱廛を巡る腹の探り合い
本店都房になったチスが乱廛(露店・市場)を見回っていると、湾商時代の元仲間たちに鉢合わせします。出世しているはずのチスを、彼らはまだ目下扱いしてくる。肩書きは変わっても、昔の関係がそのまま残っている場面で、ちょっと妙な空気感があったと思います。
その後、イム・サンオクから乱廛と店舗の売却を頼まれます。チスはきっぱり断る。断られたサンオクは同盟関係にある柳商(ユサン)を使って代わりに買い取らせようと動くんですが、チスはすでに「柳商の背後にサンオクがいる」ことを見抜いていて、密取引でも先手を打つ準備を進めています。お互いが相手の手を読みながら動いている、という状態です。
この二人が表では穏やかにやり取りしながら水面下で全力で動いている構図が、このドラマで一番面白い部分だと思っています。「拒否」の一言の裏に何重もの読み合いがある感じが好きです。
この10話全体の感想
この10話を通して一番気になったのは、チスが「悪い人か良い人か」という問いを意識的に宙吊りにしているつくりだなってことです。救恤米の件はどう見ても一線を越えていて、ミグムへの突き放し方も相当一方的。でも完全な悪役にもしない。こっそり米と木綿を届けたり、内紛で大房を守るために体を張ったり、消えきらない「義理」みたいなものがちょこちょこ顔を出す。そのバランスが絶妙というか、つかみどころがないというか。
第30話の時点では、チスは松商の本店都房として腰を据え、イム・サンオクとの乱廛を巡る駆け引きの最中にいます。人参交易権では完敗しましたが、次の手は既に打ち始めている状態です。
コメント