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第31〜40話は、チョン・チスという人物の「本性」がはっきり露わになっていくパートです。人参の密取引、恩人ホン・ドゥクチュの死、燕京での商団同士の真剣勝負、そして松商大房の座をめぐるクーデター。チスが利益と権力だけを追う人間になっていく一方で、イム・サンオクはまったく別の方向に進み続けます。2人の差が数字ではなく「人としての部分」で開いていくのが、この10話を通じて見えてくることだと思っています。後半の救荒塩のくだりが、特に後を引きました。
密取引の発覚と恩人の死──チスが崩れていく起点
官衙(役所)から人参の密取引に関する捜査が入り、主犯格がチスであることが浮かびます。松商の行首たちは「あの緻密さは将来の大房になる器だ」とチスを評価する一方、大房のパク・チュミョンは「商売にも境界がある。人参の密取引は度を越している」と真っ向から諫めます。チスの「やり方」に初めて正面からブレーキがかかる瞬間です。
そのタイミングで、湾商の大房ホン・ドゥクチュが密取引の事実を掴んでしまいます。ホン・ドゥクチュはチスを最初に見出して育てた恩人。チス自身、その死を望んでいなかった。しかし密取引に関与していた湾府差使(マンブチャサ)がホン・ドゥクチュを殺害し、チスの側近チャン・ソクチュはそれを黙認します。
捜査でシラを切り続けたチスが、葬儀の場でいきなり崩れ落ちて「申し訳ありません」と号泣するシーン。演技なのか本心なのか判断しきれないまま見ていたんですが、どちらであっても後味の悪さは変わらなくて。ここがチスの「壊れ始め」だったんだと、後になって思います。
松商の連続失敗と、湾商の根回し
ホン・ドゥクチュの死から半月。パク・チュミョンはチスへの牽制を強めながら、湾商が人参商売に全力を注いでいるという知らせを受け、「松商も人参に集中する」と決めます。ところが人参を蒸すための蒸包所(チュンポソ)を探させると、すでに湾商がすべて買い占めていた。
「湾商を意識しすぎず、自分たちのペースで動くべきだ」と反対するパク・タニョンを押し切り、パク・チュミョンは自前で蒸包所を建てさせます。しかしその蒸包所は火事で全焼。松商の失策が重なります。同時期チスは、戸曹正郎(ホジョジョンラン)の友人を利用して朝廷人脈を活用しようとしますが、その関係が発覚して友人が免職になってしまう。
チスのやり方には「自分だけが抜け出せればいい」という雑さが滲んでいて、巻き込まれた友人の側から見るとほんとうにたまったもんじゃないな、と思いながら見ていました。
燕京でサンオクが人参に火をつける
燕京(清)での取引で、清国の商人たちが談合して人参を50両まで買い叩こうとする動きに出ます。まず松商が折れ、1斤65両で売り出す。するとサンオクが動いた。松商の人参を全量買い取り、他の朝鮮商団の人参もすべて買い集めて、市場の物量を独占してしまうんです。
そしてサンオクは宣言します。「朝鮮の魂が込められた人参を二束三文で売るくらいなら、いっそすべて燃やしてやる」と。実際に紅参を燃やすパフォーマンスを見せつける。清の商人たちの談合はこの強気な姿勢と焦らしで崩壊し、湾商は最終的に1斤200両で売り切ることに成功します。65両で売った松商との差は、金額だけじゃなく精神的にも相当大きかったはずです。
「燃やしてやる」って、普通は言えないし実行もできない。それをやったサンオクの顔が、狂気じみているわけじゃなくてただ静かに確信している感じで、そのギャップがずっと頭に残っています。
一夜の牢獄を経て、チスがクーデターを起こす
朝鮮に戻ると役人が待ち構えていて、パク・チュミョンとチスの2人がまとめて捕縛されます。ホン・ドゥクチュ殺害か密取引絡みか、いずれかの容疑で。2人は並んで獄中で一夜を過ごしますが、証拠不十分ですぐに釈放されます。
この体験がチスの中で何かを決定させたようです。釈放後、チスは「自分が大房にならなければ」と動き出します。「裏切りを飯を食うようにするのか」と非難されながらも各方面を奔走して勢力をまとめ、ついにパク・チュミョンを追い出して松商大房の座を奪い取ります。
「裏切りを飯を食うようにするのか」というセリフ、止めているわけでも哀れんでいるわけでもなく、ただ事実として言っている感じがして。チスも否定しないし、否定できないんでしょうね。
大房になったチスと、救荒塩が突きつけたもの
クーデターから1年後。松商の大房として実権を握ったチスは、高利貸し業や塩事業を手広く展開し、利益を追うことだけに集中するようになっています。かつて関心を持っていたホン・ミグムやパク・タニョンといった女性への興味は完全に消えていた。金だけを見ている人間になっている。
そこにサンオクが塩を買いに来ます。チスは相場の3倍という値段で売りつけた。しかし後から判明したのは、サンオクの目的が市中の塩を買い集めて「救荒塩(クファンヨム)」として民に配り、塩の価格を下げることだったということです。純粋な慈善でした。
それを知ったチスは言います。「商売で競合したわけでもなく、救荒塩として施そうとする者に3倍で売ってしまった。サンオクに何度も後れを取ったことはあっても、今のように惨めな気持ちになったことはない」と。
「惨め」と言えるうちは、まだ何かが残っているんだと思います。それが救いなのか消えかけているものの最後のかけらなのか、そこがどうにも気になります。
この10話全体の感想
チスとサンオクが「同じ商人」として完全に別の方向に分かれていくのが、この10話で一番見えたことです。チスは緻密で頭が切れて、実際に結果も出している。でも積み上げるたびに何かを削っている。そしてその削れた部分に自分でも気づいている──それが救荒塩のシーンに出ていました。恩人の葬儀で崩れ落ちた姿と、大房になってから「利益の人間」になりきった姿の落差が、数年の出来事とは思えないくらい大きくて。チスを単純な悪役として見られないのは、そのギャップのせいだと思っています。
第40話時点で、チスは松商の大房として実権を握り、サンオクは救荒塩の件で静かにチスの「上」を行った形になっています。2人の差は、数字ではなく人としての部分で、じわじわと開いているところです。
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