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『太宗イ・バンウォン』は、2021年から2022年にかけて韓国KBSで放送され、朝鮮王朝の礎を築いた“太宗(テジョン)”ことイ・バンウォンの生涯を描いた本格的な歴史ドラマ作品です。高麗末期から朝鮮建国期に至る激動の時代を背景に、王座をめぐる壮絶な政権争いや、父である太祖イ・ソンゲとの確執をはじめとする数々の試練を乗り越えていくイ・バンウォンの姿が大きな魅力となっています。歴史上の実在人物を中心に、王家や臣下たちの思惑、そして国家誕生の裏でうごめく人々の野望と信念が交錯する、骨太なストーリーが見どころです。
物語は、王権をめぐる苛烈な駆け引きと、民を思う理想を抱えながらも手段を選ばぬ覇道を進むイ・バンウォンの運命を軸に、激動の朝鮮建国期を壮大なスケールで描いていきます。次々と変化する情勢の中、“何が正義で何が大義か”を問い続ける彼の歩みは、身内ですら敵に回る可能性がある厳しい時代において、いかに王としての道を切り開いていくのか──その行方にも注目が集まります。史実に基づきながらも、ドラマならではの人間ドラマが織り込まれ、権力争いの先にある儚さや人間関係の機微をあぶり出す展開は、視聴者の心を強く揺さぶります。
激しい政権闘争や戦乱だけでなく、家族や臣下との複雑な絆や、時に胸を打つ情愛の要素など、硬派な時代背景をベースにしながらも深みのある人間模様を存分に味わえるのも本作の魅力です。朝鮮王朝を扱った歴史ドラマが好きな方はもちろん、権力争いや“人間の業”を描く骨太な時代劇を求める人にもおすすめしたい作品です。圧倒的なスケールの中で描かれる、イ・バンウォンという一人の英雄の光と影を、ぜひその目で確かめてみてください。
ここでは『太宗イ・バンウォン』のあらすじ・ネタバレ感想、そして見どころなどを余すところなく紹介し、その魅力に迫っていきます。
もくじ
太宗イ・バンウォン あらすじ
滅びゆく高麗王朝が内憂外患にさいなまれ、民衆は疲弊の極みにあった14世紀末の時代から始まります。名将として名高いイ・ソンゲ(後の太祖)が国の命運を左右する大軍を率い、朝廷内では新たな勢力が台頭する気配が高まっていました。しかし、老いた王や腐敗した権臣たちの思惑が渦巻く中、まだひとりの「王子」にすぎないイ・バンウォンの存在は、表舞台ではさほど注目されていなかったのです。
そんなイ・バンウォンが、ある出来事をきっかけに朝廷の権力争いへ深く関わることとなり、“覇道”への第一歩を踏み出していく場面から、ドラマは幕を開けます。父・イ・ソンゲが揺れ動く朝鮮建国への大義を胸に秘める一方、彼を取り巻く王子たちや功臣、そして既存の体制にしがみつく者たちが、一筋縄ではいかない政治の駆け引きを繰り広げる展開に──。いつ、誰が、どこで敵や味方に転じるのか分からない状況下で、イ・バンウォンは己の信念と冷徹な判断力を武器に、次第に自らの存在感を示しはじめます。
権力の座をめぐる暗躍や血縁ゆえの確執を乗り越え、なぜイ・バンウォンが“太宗”として歴史に名を残す存在になったのか。その道程を描く最初の一歩が、本作の冒頭で早くも火花を散らすのです。朝廷と父のはざまで苦悩しながらも、次第に野望と理想が入り混じる王者の道へ足を踏み入れていくイ・バンウォンの姿は、見る者に大いなるドラマの始まりを予感させます。彼がいかにして時代を動かしていくのか――朝鮮王朝誕生の序章をぜひその目で確かめてみてください。
「太宗イ・バンウォン-各話あらすじ」はこちらから
ご覧になりたい話数を押していただけると各話の詳しいあらすじが表示されます。
こちらはオリジナル全32話版で書いていますが、BS朝日は全36話となっておりますので、ご注意ください。
第1話
第2話
第3話
第4話
第5話
第6話
第7話
第8話
第9話
第10話
第11話
第12話
第13話
第14話
第15話
第16話
第17話
第18話
第19話
第20話
第21話
第22話
第23話
第24話
第25話
第26話
第27話
第28話
第29話
第30話
第31話
第32話(最終回)
見どころ
見どころ①:苛烈な権力争いと朝鮮建国のドラマティックな過程
『太宗イ・バンウォン』では、滅びゆく高麗王朝から朝鮮王朝建国に至るまでの激動の時代が舞台となり、壮絶な政権争いが繰り広げられます。父・イ・ソンゲ(後の太祖)と息子・イ・バンウォン、そして宮廷内外で次々と姿を現す野心家たちが、それぞれの理想と大義を胸に、複雑に絡み合う権力闘争を展開する様子は圧巻。歴史的背景をベースにした重厚なストーリーは、まさに“骨太な時代劇”の醍醐味です。
見どころ②:父と子の確執が生むヒューマンドラマ
王位継承をめぐって生じる親子や兄弟との確執は、本作を語るうえで欠かせない大きな見どころ。王になるためには手段を選ばない冷徹さを見せる一方で、どこか熱い信念を秘めたイ・バンウォンと、彼を生んだ名将イ・ソンゲが激突する場面は、政治ドラマでありながら人間ドラマとしても見応えがあります。血縁ゆえにこじれる愛憎劇が、視聴者の心を揺さぶること間違いなしです。
見どころ③:歴史上の実在人物が織り成す群像劇
イ・バンウォン以外にも、朝廷を支える功臣や朝鮮王朝の未来を担う王子たちなど、歴史の教科書でも名を見かける人物が多数登場します。史実をもとに緻密に描き出される彼らの動向や人間模様は見応え十分。時に互いを利用し、時に信義を重んじながら“新しい国”を創り上げていく人々の姿は、単なる背景ではなくドラマの主軸として大きな存在感を放ちます。
見どころ④:壮大なスケールと映像美
王朝の交替期という大きな歴史のうねりを描くだけに、合戦シーンや宮廷の大規模セットなど、映像の迫力にも注目したいポイントが満載です。合戦の迫力、宮廷儀式の荘厳さ、そして美麗な衣装や美術など、豪華な映像表現が時代劇の世界観をいっそう盛り上げてくれます。
見どころ⑤:人間の弱さと偉大さが交差する葛藤
イ・バンウォンが王へと成長していく過程で直面するのは、単に“敵を倒す”だけでは済まされない内面の葛藤です。大義を貫くために時に非情な決断を下す一方で、家族や臣下を想う人間らしい面が見え隠れするなど、“英雄”としての光と影をリアルに描いている点が見逃せません。理想と現実の狭間で揺れ動く彼の姿に、視聴者は思わず引き込まれることでしょう。
キャスト・登場人物 相関図
韓国ドラマ『太宗イ・バンウォン』のキャスト&主な登場人物一覧です。
チュ・サンウク(主演:李芳遠〈イ・バンウォン〉役)
プロフィール:1978年生まれの韓国人俳優です。世代交代劇『ジャイアント』(2010年)、医療ドラマ『グッド・ドクター』(2013年)、ロマンティックコメディ『美女の誕生』(2014年)などで主役級を務め、一躍人気を博しました。
劇中での役柄:李芳遠(イ・バンウォン)を演じます。李成桂(イ・ソンゲ)の五男で、新王朝・李氏朝鮮の建国にあたり父を助けて高麗王朝打倒に大きく貢献し、後に朝鮮第3代国王・太宗として即位する人物です。激動の時代に新しい秩序を築くリーダーであり、劇中では王位継承をめぐる権力闘争に挑む姿が描かれます。
劇中写真:青い儒服姿のチュ・サンウク(右側)は、若き日の李芳遠を演じています。朝廷で父・李成桂(左側の後ろ姿)と対峙し、複雑な表情を浮かべるシーンで、激しい葛藤を抱える李芳遠の人間性が表現されています。
キム・ヨンチョル(主演:李成桂〈イ・ソンゲ〉役)
プロフィール:1953年生まれの韓国人俳優で、1980年代から活躍する大ベテランです。2000~2002年のKBS大河ドラマ『太祖王建』で弓裔(クンイェ)役を演じたほか、映画『甘い人生』(2005年)でのギャングのボス役、テレビドラマ『IRIS アイリス』(2009年)でのNSS副局長役などで知られています。重厚な演技で数々の作品に存在感を示してきました。
劇中での役柄:李成桂(イ・ソンゲ)を演じます。高麗末期に名将として各地を転戦し、ついには高麗を倒して李氏朝鮮の初代国王(太祖)となった人物です。戦乱の英雄として不屈の武勇を誇りますが、新朝建立後は息子の李芳遠に権力を譲る過程で葛藤を経験します。劇中では、国の未来を巡り李芳遠と父子で対立する姿も描かれます。
劇中写真:赤い王袍をまとったキム・ヨンチョルが演じる李成桂(左)は、朝鮮初代国王・太祖としての威厳を漂わせています。また写真右の甲冑姿の李成桂は、建国以前に武将として戦場を駆け抜ける勇ましい姿で、彼の武人としての一面を物語っています。
パク・ジニ(主演:元敬王后・閔氏〈ミン氏〉役)
プロフィール:1978年生まれの韓国人女優です。ドラマ『帰ってきてスネさん』(2006年)や『銭の戦争』(2007年)、『ジャイアント』(2010年)などで主演を務め、宮廷ミステリー映画『宮女』(2007年、日本未公開)にも出演しました。幅広いジャンルで活躍し、高い演技力で知られています。
劇中での役柄:元敬王后(ウォンギョンワンフ)こと閔(ミン)氏を演じます。李芳遠の正妻であり、後に王妃として朝鮮王朝の内命婦を統率する女性です。名門閔氏一族の出身で美しく聡明な彼女は、夫の李芳遠を支えるために全てを捧げましたが、晩年には夫との関係が疎遠になるという波乱の生涯を送りました。劇中では、夫への愛情と政治的野心との間で葛藤する姿が繊細に描かれます。
劇中写真:紫の韓服に身を包んだパク・ジニは、王妃となる閔氏(元敬王后)を演じています。穏やかながらも毅然とした表情から、王妃として宮廷を支える気品と強い意志が感じられ、李芳遠の良き伴侶であり政治的パートナーであった人物像が表現されています。
イェ・ジウォン(主演:神徳王后・康氏〈カン氏〉役)
プロフィール:1973年生まれの韓国人女優です。ヒットしたシチュエーション・コメディ『オールドミスダイアリー』で主演を務め、一方でホン・サンス監督の映画『Turning Gate』(2002年)や『Hahaha』(2010年)などでシリアスな演技にも定評があります。コミカルからシリアスまで自在に演じ分ける実力派です。
劇中での役柄:神徳王后(シンドクワンフ)こと康(カン)氏を演じます。李成桂の側室出身で、李氏朝鮮建国後に初代王妃となった女性です。名門の出で先天的に政治的勘が鋭い彼女は、李成桂との運命的な出会いを経て王妃にまで上り詰めました。劇中では、自らの産んだ息子を後継者に立てようとする中で李芳遠と後継争いの軋轢を生じさせ、王朝序盤の権力闘争に巻き込まれていきます。
劇中写真:劇中でイェ・ジウォンが演じる神徳王后・康氏は、淡い紫の韓服と華やかな髪飾りを身に着けています。これは李成桂の寵愛を一身に受けた王妃時代の姿で、柔和な微笑みの裏に王家の未来を案じる聡明さと気丈さが垣間見えます。朝鮮最初の王妃として、新王朝の権力構図に影響を与えた人物像が表現されています。
イ・グァンギ(出演:鄭道伝〈チョン・ドジョン〉役)
1. プロフィール:1969年生まれ。韓国のベテラン俳優で、KBS大河ドラマ『太祖王建』やJTBC時代劇『鄭道伝』、本作『太宗イ・バンウォン』など数々の史劇で印象的な演技を披露してきました。近年は俳優業のほかアートディレクターとしての活躍も伝えられています。
2. 劇中での役柄:鄭道伝(チョン・ドジョン)を演じます。高麗末期から朝鮮建国期にかけて活躍した儒学者・政治家であり、号は“三峰(サンボン)”と称されます。李成桂の参謀として新王朝樹立に決定的な役割を果たしましたが、王位継承を巡る対立から後に李芳遠に排除される運命となりました。劇中では、理想の国家を築こうとする改革派として鋭い洞察力を発揮しつつ、やがて権力闘争に巻き込まれていく姿が描かれています。
チェ・ジョンファン(出演:鄭夢周〈チョン・モンジュ〉役)
プロフィール:1964年生まれ。韓国の実力派俳優で、長年にわたり多くの作品に出演しています。2011年には時代劇『階伯(ケベク)』およびドラマ『짝패(チャクペ、邦題:ザ・デュオ)』での演技によりMBC演技大賞のプロデューサー賞を受賞しました。近年も現代劇から史劇まで幅広く活躍しています。
劇中での役柄:鄭夢周(チョン・モンジュ)を演じます。高麗王朝に最後まで忠義を尽くした名臣で、新王朝への合流を拒んだ人物です。李成桂からも信頼されていましたが、新朝を追求する李芳遠とは対立し、高麗の「最後の忠臣」としてその名を残しました。劇中では、旧体制への忠誠を貫き通す高潔な士大夫として描かれ、李芳遠との対峙は物語の重要な山場となります。
相関図
李芳遠(イ・バンウォン) – 本作の主人公。朝鮮王朝初代王・李成桂(太祖)の五男にあたり、後に第3代国王「太宗」となる人物。頭脳明晰で野心家だが人間的な悩みも抱える複雑なキャラクターとして描かれます。演じるのは俳優チュ・サンウクです。
李成桂(イ・ソンゲ) – 李芳遠の父であり、高麗を倒して新王朝・朝鮮を建国した武将。即位後は「太祖」として初代王となります。演じるキム・ヨンチョルは、重厚な存在感で新国家を築くカリスマ的な父親像を体現しました。
康氏(カン氏) – 李成桂の後妻であり李芳遠の継母。劇中では「神徳王后」として知られ、自分の産んだ息子たちを後継に擁立しようと画策する人物です。演じるイェ・ジウォンの迫真の演技が、継母としての愛憎や権力欲を鮮烈に表現しました。
閔氏(ミン氏) – 李芳遠の正妻であり、のちに「元敬王后」として王妃になります。夫である李芳遠と苦楽を共にし、ときに対立もしながら王朝を支える女性です。演じるパク・ジニは聡明で芯の強い王妃像を熱演し、高く評価されました。
李芳遠を取り巻く人物としては他にも、李成桂の他の息子たち(芳遠の兄弟)や李芳遠自身の子どもたちが登場します。李成桂の長男・李芳雨(イ・バンウ)や次男・李芳果(イ・バングァ)(後の第2代王 定宗)、六男で芳遠の弟にあたる李芳碩(イ・バンソク)など兄弟間の王位継承争いが重要な軸となります。また李芳遠と閔氏の間の長男李禔(ヤンニョン大君)と次男李祹(チュンニョン大君)も後半に成長した姿で登場し、長男の失脚と次男(後の世宗)の台頭といった父子の確執が物語に深みを与えています。主要人物の関係は複雑ですが、「父(太祖)vs息子たち」「継母vs継子(芳遠)」「夫(芳遠)vs妻(閔氏)」「兄弟間の対立」など、家族の権力争いが大きなテーマとなっています。
視聴率の推移
韓国での視聴率は放送開始当初から注目を集めました。初回放送の第1話は全国平均8.7%の視聴率で順調な滑り出しを見せます。しかし年末年始にかけて一時的に視聴層が離れ、第6話では最低6.7%まで落ち込みました。年が明けて物語が本格化すると視聴率は再上昇し、第8話で初めて二桁の10.2%を記録します。以降も勢いは続き、第11~12話には11%台まで達して放送開始直後のピークとなりました。
ところが第7話の撮影中に起きたある事故(後述)の影響で放送が一時中断します。約5週間の休止を経て2022年2月末に放送が再開されましたが、ブランクの影響もあり第13話再開直後の視聴率は8.0%と二桁割れしてしまいました。その後は物語の盛り上がりとともに徐々に持ち直し、イ・バンウォンがついに王座に就くクライマックスが描かれた第22話で再び10%台に回復します。終盤には視聴率も安定し、第28話では自己最高となる11.7%をマークしました。最終回の第32話は全国平均11.5%で有終の美を飾り、特に李芳遠の最後の登場シーンでは瞬間最高14%に達する勢いを見せました。
歴史との違い
『太宗イ・バンウォン』は基本的に史実に沿って物語が進みますが、演出上の脚色や設定上の変更もいくつか見られます。たとえば、高麗末の威化島回軍(李成桂が軍を引き返してクーデターを決意する事件)に関連して、史実では将軍崔瑩(チェ・ヨン)が隻眼になった事実はありませんが、劇中では崔瑩が片目を負傷する描写があります。また、第16話で描かれた第一次王子の乱(李芳遠が異母弟らを粛清したクーデター)の場面では、芳遠の正妻である閔氏が甲冑を身に着けて戦闘に加わるシーンが登場しました。歴史資料に女性が前線で武装して戦った記録はなく、この大胆な演出については「一人だけファンタジー鎧だ」「史実とは異なる過剰な美化では」と一部視聴者から賛否が分かれました。さらに登場人物の中には、史実上の複数人物のエピソードを統合した架空のキャラクターもいます。例えば李化生という人物の描写には、本来別の武将である李之蘭(イ・ジラン)の次男 李和榮の事績が混ぜられていたり、重臣朴訔の行動が趙末生(チョ・マルセン)のそれと重ねられているなど、物語の簡潔さを優先して史実をアレンジした部分も見られます。
制作秘話と放送中のエピソード
5年ぶりの本格時代劇復活: 『太宗イ・バンウォン』はKBSが2016年の『チャン・ヨンシル』以来5年ぶりに手掛けた大型時代劇です。近年はファンタジー要素の強い「フュージョン時代劇」が主流になる中、正統派の大河ドラマの復活として企画段階から話題になりました。特に放送前年の2021年には、他局の歴史ドラマが中国風の小道具使用などで歴史歪曲の批判を受け途中打ち切りになる事件(SBS『朝鮮駆魔師』騒動)があったため、「歴史を丁寧に描く正統ドラマ」として本作への期待が高まったのです。KBSドラマ局は長らく途絶えていた大河枠の再興を図るべく、李氏朝鮮建国の立役者である李芳遠の物語を満を持して制作しました。
動物虐待疑惑と放送中断: 放送中に本作最大のトラブルとなったのが馬の撮影事故です。第7話の李成桂が落馬するシーン撮影で、スタッフが馬の脚にワイヤーを括り付けて転倒させる手法を用いたところ、撮影から約1週間後にこの馬が死亡しました。この事実が動物保護団体によって公開されると韓国世論は激しく反発し、「動物虐待ではないか」との批判が殺到します。KBSは「深く責任を痛感する」と謝罪し、本編の放送を急遽5週にわたり中断する事態となりました。実際に2022年1月中旬から2月下旬まで、新作ドラマにもかかわらず約6週間の長期休止を余儀なくされています。視聴者からは番組の打ち切りを求める声も上がり、青瓦台(大統領府)の公式請願サイトにはドラマ制作陣の処罰と放送中止を求める請願が1週間足らずで6万件以上の同意を集めました。主演俳優たちのSNSにも「降板すべきだ」「謝罪せよ」といったコメントが相次ぎ、社会問題化しました。
再発防止策とその後: 大きな批判を受けたKBSは、放送再開にあたり動物撮影に関する社内ガイドラインを新設することを表明しました。以後は動物が登場するシーンではCG合成の活用や演出方法の工夫により、安全に配慮する方針が示されています。幸いドラマ自体は第13話から放送が無事再開され、全32話を完走しました。事故の影響で制作スケジュールは乱れましたが、物語後半のクオリティも大きく損なわれることなく完結に至っています。その後、2024年1月にはこの馬虐待疑惑について裁判所の判決が下され、撮影責任者であるKBSのプロデューサーや武術監督など制作スタッフ3名に対し、それぞれ罰金1,000万ウォン(約100万円)の有罪判決が言い渡されました。KBS放送局自体にも500万ウォンの罰金が科され、今回の事件の社会的影響の大きさが改めて示されています。このように放送中には思わぬトラブルもありましたが、一方で俳優たちの熱演や堅実な脚本・演出により、最終的には作品として高い評価を得るに至りました。
韓国での話題と評判
『太宗イ・バンウォン』は韓国国内で放送中、多くの話題を呼びました。5年ぶりの正統派史劇ということで往年の時代劇ファンから歓迎されただけでなく、放送開始直後からSNSやコミュニティで感想が飛び交い、コンテンツ影響力指数(CPI)では1月第3週に総合1位を記録するなど注目度の高い作品となりました。物語前半は李成桂と息子たちによる朝鮮建国の描写、後半は李芳遠の王位簒奪と統治という重厚な内容ですが、「最近の派手なフュージョン時代劇とは一線を画す渋い作風が新鮮」と評価する視聴者も多く、久々に登場した骨太な大河ドラマを楽しむ層が一定数見られました。
一方で、全32話というコンパクトな構成ゆえに展開が駆け足気味であるとの指摘もありました。往年のKBS大河『龍の涙』(1996~98年・全159話)や『太祖王建』(2000~02年・全200話)などに比べると物語の尺は大幅に短縮されており、主要な歴史事件のみを追っているため「テンポが良く今の視聴者に合っている」という肯定的な意見と、「駆け足でエピソードの深みが足りない」という否定的な意見とが分かれました。実際、長年正統派の時代劇を待ち望んでいた年配層には概ね好評だった一方、若年層の中には伝統的すぎる作風を地味に感じる向きもあったようです。また前述した馬の事故に絡む動物愛護の問題は本作最大の汚点となり、一部では作品自体への不信感を招いてしまいました。
このような逆風もありましたが、ドラマの完成度自体は高く評価されています。特に俳優陣の演技とキャラクター描写は高い賞賛を受けました。主演のチュ・サンウクは、父を追放し兄弟を手にかけてまで王座に上り詰める李芳遠の苦悩する内面を繊細に表現し、「冷徹な権力者であると同時に人間らしい葛藤を抱えた姿を見事に演じ切った」と評価されました。李芳遠が「血まみれになってうなり狂う怪物になってやる」と自らの変貌を予言する印象的なセリフなどを通じて、権力に取り憑かれた暴君ではなく内心に傷を負った人間としての側面も丁寧に描かれています。文化評論家のチョン・ドクヒョン氏は「李芳遠というキャラクターは従来、狂気じみた人物か英雄として極端に描かれがちだったが、今作ではその二面性がよく表れていた。兄弟同士が殺し合う『骨肉の争い』という非常に重いテーマに対しても、物語としての必然性がしっかりと描かれていた」と好意的に評しています。また別の評論家ハ・ジェグン氏は「かつて『龍の涙』で李芳遠を演じたユ・ドングンは英雄的な面が強かったが、今作では李芳遠の多様な面を総合的に描こうとした努力が感じられる」と述べており、過去の名作との比較においても本作独自のアプローチが光ったとの指摘がありました。
さらに、本作では女性キャラクターの活躍も話題になりました。李芳遠の妻・閔氏(元敬王后)や継母の康氏(神徳王后)といった歴史上の女性たちが物語の中で能動的に描かれており、特に閔氏は李芳遠と対等に渡り合う強い存在感を示しています。劇中で李芳遠が「俺が王だ!」と怒鳴る場面では、閔氏が「その王を作ったのはこの私です」と言い返すセリフがあり、視聴者の間でも印象的なシーンとして語られました。評論家チョン・ドクヒョン氏は「女性の役割が際立っていた。現代の視点から女性を能動的に描こうという意図があり、実際の歴史上の人物もただ者ではなかったことが反映されている」と分析しています。ハ・ジェグン氏も「これまで李芳遠の強烈なキャラクターがドラマの主軸だったが、今作では妻の役割にも焦点を当て、従来とは異なる展開を描こうとしたようだ」と述べています。このように女性陣の熱演とキャラクター造形も高く評価され、主演のパク・ジニ(閔氏役)とイェ・ジウォン(康氏役)はそれぞれKBS演技大賞で最優秀女優賞・助演女優賞を受賞しました。チュ・サンウクも本作での演技が認められ、2022年のKBS演技大賞において堂々の大賞(最高賞)に輝いています。
豆知識
ミニドキュメンタリーの放送: 本編各話の終了後には、その回で描かれた史実に関連する人物や史跡を紹介するミニドキュメンタリー映像が挿入されました。毎週日曜の放送(各週の偶数話)終了直前に2~3分程度の短い解説コーナーが設けられ、例えば李芳遠ゆかりの史跡や彼と関わりの深い人物の逸話が紹介されています。これは視聴者に歴史的背景をより深く理解してもらうための工夫で、KBS大河ドラマの伝統的な演出の一つでもあります。
旧作との対比: 李芳遠(太宗)は韓国史劇で繰り返し取り上げられてきた人気題材であり、1990年代の名作『龍の涙』(용의 눈물)でも主人公として描かれました。『龍の涙』は李芳遠の波乱の生涯を壮大なスケールで描いた作品で、全159話にも及ぶ超大作でした。それに対し『太宗イ・バンウォン』は全32話と物語が大幅に凝縮されており、同じ題材でも時代に合わせてドラマ制作のスタイルが変化していることが伺えます。過去作を視聴済みのファンからは「『龍の涙』で描かれたエピソードが今作では省略されている」「ユ・ドングン版の芳遠に比べてチュ・サンウク版はより人間味がある」といった比較論も語られ、往年のファンも新鮮な気持ちで鑑賞できる作品となりました。
後続企画: KBSは本作の成功を受け、次回の大河ドラマ企画として『高麗契丹戦争(仮)』を準備中であると報じられています。11世紀の高麗と契丹の戦いを描く予定の作品で、こちらも32部作で制作される見込みとのことです。『太宗イ・バンウォン』によって復活した大河ドラマ路線が今後も継続され、さらなる歴史ドラマファン層の拡大につながることが期待されています。
評価・レビュー
韓国ドラマ「太宗イ・バンウォン」の評価レビュー&感想です。
ストーリーの良し悪し、出演者の演技力、物語の展開、脚本の面白さなどを総合的に評価しています。
もちろん、レビュー&感想の中にも作品に関するネタバレがありますのでご注意ください♪
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長いようであっという間だった全32話ですが、みなさんはいかがでしたでしょうか?私は最終回まで見届け、さまざまな思いが胸に込み上げてきました。ここでは全体を振り返りながら、私なりの感想をまとめてみたいと思います。
まず「太宗イ・バンウォン」の何よりも印象的だったのは、その徹底的な“政治闘争”の描き方でした。王位を巡る争いはもちろん、父と子、兄弟、外戚、功臣といった多彩な立場の人々が、それぞれの生存や欲望をかけて“国をつくる”という大きなうねりに巻き込まれていきます。特にイ・バンウォン本人が、血ぬられた道を歩みながらも国家体制を安定させようとする姿は、見ていて複雑な感情を呼び起こしてくれました。そこには「家族を守りたい」と思う素顔も垣間見えるのに、いざ権力を握るとなると親兄弟すら切り捨てざるを得ないという悲壮さがあり、実に切なかったです。
このドラマを観て強く感じたのは、「王という立場が、いかに残酷な選択を迫るものか」という点です。たとえば、ヤンニョン(王太子)が正しい道を踏み外す一方で、チュンニョン大君が学問や政治に熱心に取り組む姿が浮き彫りになるにつれ、イ・バンウォンが親として苦しむ様子が痛々しかったですね。自分もかつては父イ・ソンゲと対立して王座を手にした人だからこそ、息子の自滅的な行動に直面することで、ますます複雑な思いにさいなまれる。
実際、ヤンニョンが廃位される流れは、あれほど悲惨な内紛をくぐり抜けてきたイ・バンウォンにとっても大きなショックだったと思います。ただ、王として国を支える“器”が足りないと判断すれば、血を分けた子であっても容赦なく退けるしかないというのが、彼の政治哲学の悲しいところでした。視聴者としては、「もう少しヤンニョンに自覚が芽生えていれば…」と思わずにいられませんが、それがまた王太子の悲劇の核心でもありました。
そして最終盤では、チュンニョン大君がセジョンとして即位し、名実ともに“新しい王”へと躍進します。歴史を知っている私たちからすると、「セジョン大王」が誕生した瞬間は感慨深いですよね。ところが、ここでやっと安定するかと思いきや、イ・バンウォンが兵権を手放さずに影響力を維持し、さらにシムオンの存在やカンサンインの獄などが新たな波紋を広げます。結果として、父と息子の親子対立が一層強まる構図に。
イ・バンウォンが“上王”として今なおセジョンの政治に干渉し、セジョンが「父のやり方には賛同できない」と立ち上がるあたりのやりとりは、ドラマのテーマでもある「政治と家族の絶妙な境界」を、最後の最後まで鮮明にしてくれました。セジョンが「正しい手続きを踏まずに血を流すことは認められない」と断固主張する姿は、イ・バンウォンが歩んできた道とは正反対で、そのぶつかり合いは見ごたえ十分だったと思います。
一方、原動力となってきた民氏(元敬王后)も、兄弟を失い、ついには王太子(ヤンニョン)の廃位をも看取る形となって心身が限界に達し、最終的には王を許さないまま退場してしまいました。彼女こそ、イ・バンウォンと共に「家族とは何か」「国とは何か」を象徴する人物だっただけに、二人の間のすれ違いが最後まで修復されなかった事実はとても切ないですね。愛し合いながらも血塗られた政治の犠牲となり、互いに罪を負い続けるまま終わる姿は、今作の悲哀を象徴しているようでした。
さらに、最終回で語られるイ・バンウォン自身の死も、圧巻でした。兵権を持ちながら晩年を迎え、最期まで国と政治を離れられない姿。息子セジョン(チュンニョン)に「これからはお前の天下だ」と言うわりには、名実ともに力を完全に渡しきれない矛盾。それでも「息子が理想の政治を成し遂げてくれれば、自分のやり方が誤りだったことを証明してくれる」という台詞(または雰囲気)が、人生の晩年におけるイ・バンウォンの葛藤を見事に表していました。
最終的にはイ・バンウォンが愛する妻(元敬王后)に許されることもなく、子どもたちからも批判される部分が多いまま他界してしまう展開は、悲劇的ながらも“歴史大河”ならではの厚みがあったと思います。そもそもイ・バンウォンは「朝鮮王朝を盤石にするためには、血の犠牲も厭わない」という信念で動いてきた人物ですから、一族や外戚、さらには自分自身まで犠牲にしたのかもしれません。
最終回を終えて振り返ると、「太宗イ・バンウォン」というドラマは、純粋な娯楽というより“政治と家族を描いた骨太な史劇”という印象が強く残ります。従来のファンタジー要素が強い時代劇とは一線を画し、朝鮮王朝初期の権力闘争を正面から映し出した点が新鮮でした。個人的には「もっと細かい戦闘シーンや華やかな演出も見たかった」という声もわかりますが、それでも充分迫力ある人間ドラマを楽しめました。
もちろん、制作上の都合などで駆け足に見えた部分や、もう少し丁寧に描いてほしい箇所もあったかもしれません。しかし、それでも32話という尺でよくここまで壮大な物語をまとめたと思います。朝鮮創業期に繰り広げられた骨肉の争いや、王家の悲喜こもごもを一挙に体感できる貴重な作品といえるでしょう。
ここまで壮大な話を視聴し終えて、やはり最後には“セジョン”の誕生へと物語が収束したことが感慨深いですね。彼がのちに「朝鮮史上最大の名君」と言われる背景には、イ・バンウォンの強硬な政治手腕や、民氏(元敬王后)の苦悩など、多くの犠牲が存在したと再認識させられました。このドラマがそんな“歴史の舞台裏”を伝えてくれたことに、私は大きな意義を感じています。
イ・バンウォンの物語はこれで終わりかもしれませんが、史劇ファンとしては、もし続編やスピンオフ的な作品で「セジョンの時代」がより深く描かれるなら、ぜひ観てみたいなと思います。いずれにせよ、この「太宗イ・バンウォン」は韓国史劇の新しい挑戦として大変楽しませてくれました。このドラマをきっかけに、さらなる歴史作品にも興味を持っていただけたら嬉しいです。
作品概要・基本情報
放送局:KBS(韓国)
放送期間:2021年12月11日~2022年5月1日
話数:全32話
演出:キム・ヒョンイル、シム・ジェヒョン
脚本:イ・ジョンウ
日本での放送:KNTV、BS朝日、テレビ東京などで放送
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